国際的な注目を集めるライアン・ガンダー(1976年イギリス生)の東京で初めての大規模個展。ガンダーの作品は、古今東西の美術作品や、日常生活で気に留めることすら忘れているあたりまえの物事への着目を出発点として、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像などそのジャンルは多岐にわたります。制作の背景には、「見る」ということについての考察や日常経験の鋭い分析など、知的な好奇心が満ちあふれていて、その作品は見る人の思考や創造力を刺激して、私たちにさまざまな問いを抱かせます。意外なもの同士を結びつけ、情報を部分的に隠蔽し、ユーモアをまじえて「そもそも」を考えるきっかけをつくるのは、ガンダーの作品の真骨頂です。作品を前にすれば、思わずクスッとしたあとに、はっとするような発見が待っていることでしょう。新作を含めて空間全体を一つの作品として創り上げることを目指す今回の個展を、ガンダー自身も楽しみにしています。
本展は当初2021年に開催を予定していましたが、コロナ禍により延期を余儀なくされました。しかし本人の申し出により「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を代わりに開催し、絶妙な手法で当館の寺田コレクションに新しい光を当てました。「困難な状況でも発想の転換でよいものを」。これは「創造する力」を信じるガンダーを象徴するできごとでもありました。今回、満を持しての個展に加え、上階では再び「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」を開催します。ご期待ください。