工藤麻紀子(1978-)は、青森県に生まれ、2002年に女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻を卒業。2014年から5年間平塚市内にアトリエをかまえ、現在まで個展を中心に活動しています。大学在学中より注目され、現代の絵画表現を紹介するグループ展でも継続的に取り上げられるなど、日本のアートシーンを語るうえで欠かせない画家のひとりに数えられます。
工藤は色面による構成と装飾的な表現により、日常の生活を題材にした心象風景を描き続けています。デビュー当初は鮮やかな色彩とポップなイメージを強調した作風で脚光を浴びました。視点を混在させた構図やコラージュのようなモチーフの配置など、画面の構成力には卓越した技術があり、マティスやボナールに通じる色彩と装飾性を兼ね備えた作品は国際的にも高く評価されています。
身近な出来事に対する思いを作品に投影させる描き方は初期から一貫したものです。その画面には普段の生活で見聞きしたもの、住む土地や記憶が一体となって、夢の中のような混沌とした風景が広がっています。それと同時に、作品を見る人にとって、記憶にある風景や出来事を呼び覚ます、親密さとストーリー性も有しています。
このような作品を実際にじっくりと見れば、現代の絵画表現に馴染みのない人にとっても、イメージの中に身をゆだねる楽しさや発見をともなう体験となることでしょう。
本展は国内美術館における工藤の初個展となり、新作とインスタレーション作品を含む約120点により現在までの活動を紹介します。