丹波市市島町の梶原遺跡(かじわらいせき)より出土した「犂(からすき)」が兵庫県の文化財に指定されたことを記念して、人々の生活と深く結びついた文化財や工芸品を中心に取り上げる展覧会を開催します。指定の犂2点をはじめ、同じ遺跡から発掘された考古資料のほか、丹波市内の遺跡から出土した美術工芸品を展示します。これら丹波市の考古・民俗資料の展示を通して、その歴史的な位置づけや地域的な特性を体感してください。また、当館の所蔵品からも景徳鎮の陶磁器や陶磁板画、パプア・ニューギニアの民俗芸術品など、当館の創設者・植野藤次郎氏が生前に蒐集したコレクションを紹介します。実用性も考慮して制作されたこれらの作品の、造形的な面白さをご覧ください。
近代の日本で暮らしの中の造形に対する関心が高まったのは大正末期、1926年頃のことです。美術評論家の柳宗悦(やなぎ むねよし)が民衆の工芸品、略して民芸という概念を提唱しました。西洋的な「美術史」の思想が導入された当時の日本では、作者不詳の日用雑器は美術(ファイン・アート)として認められていませんでした。柳らによる民芸運動は民芸品の「用の美」を認識し、その技術の保存や普及を図ろうとするものです。民芸運動では作品の実用性と一点ものではない多数性が重視される一方で、機械による廉価な大量生産ではなく手仕事が尊重されました。また、その地域ならではの地方性も大事にされました。近代的な意味での民芸品とは性質が少し異なるものもありますが、本展で紹介する作品の多くは日々の暮らしの中あるいは儀礼などの特別な場での「使用」を念頭に制作されたものです。展示品の「用」の側面に注目して、その造形的な「美」をお楽しみください。