「絵画の庭-三蛇花」 について
ご記憶の方も多いと思うが、ギャラリーモーニングに近い蹴上の地に、ギャラリーすずきがあった。私も2度ほど個展をさせていただいたことがあるのだが、1986年に、立体でありながらも絵画作品であるという、現在まで続くコンセプトでの最初の作品を発表したのがギャラリーすずきであった。その作品が、くしくも今回の個展と同時期に、兵庫県立美術館にて開催の「関西の80年代」展にて展示される。まだ学生の頃の作品であり、荒々しさが目立つものだが、巨大な器状の内側に色彩を施し、器状の内側に描くことにより、ジオラマのような視覚体験として表現できないかというねらいでのものだった。絵画表面を、庭を見るように楽しむ。その願いから「絵画の庭」というタイトルで作り続けてきた。この思いは30年以上経った現在でも変わらない。立体作品としての形態は複雑化しているが、内側が絵画空間の役割を担うという点では一切の変化はない。
今回メインの作品である「絵画の庭-三蛇花」も、後部立体の内側は赤色に塗られており、3本に伸びる首の内側から花状の部分まで、赤色は続いている。つまり、内包された赤い色が3本に分かれて飛び出しているような構造となっている。それは絵画性を腹中に収めた生き物が、3つの口から吐き出すようなものとでも言えようか。
「絵画の庭」の始まりの地でもある蹴上において、今回展示できることはとても感慨深い。30年以上の時を経てどのように作品が変化し、また変化していないのか、自分でも確かめてみたい。原田要