甲冑は大陸からもたらされ、鎌倉時代から日本独自の様式の発展を遂げました。特に安土桃山から江戸時代にかけて、武士の誉と力を象徴的に示すものとして、その意匠デザインや技巧は頂点に達したといえます。「甲冑の解剖術」展は、歴史と現代の対話というテーマのもと、加賀藩前田家の歴史に鑑み、甲冑という文化資産を現代的にアップデートしたかたちで紹介するために企画されました。甲冑の意匠、金工や漆、染色、組ひもなど、その文様や色彩、技巧デザインの美しさと独自性は、日本の工芸、服飾文化史において際立っています。一方甲冑は武器や戦闘法の変化に伴い、精巧な解剖学的エンジニアリングとともに進化しました。この意匠と機能の魅力を現代につなげるべく、デジタル時代の若手クリエイターたちがコラボレーションにより展示空間を演出します。甲冑の内部構造をスキャンして、「内的な美」をデジタル映像に変換するライゾマティクス。これらを現代人の身体にアンビエントにつなげる空間は、ポストインターネット世代の作家、ナイル・ケティングによってデザインされます。
甲冑と現代的なクリエイションの対話。石川県立歴史博物館や、大阪城天守閣などが所蔵する、多様な意匠、様式の甲冑が、特別なケースデザインや繊細な照明によってハイパーに現代によみがえります。―生き抜く知恵と身を飾ることの誇りと喜び―本展は、現代のクリエイターたちの手によって、甲冑の存在とパフォーマンス性を更新し、現在という場所に新たに出現させる試みとなります。