画家の幸田千依は、日本各地に滞在することで、その土地で過ごす時間の積み重ねの中から作品の着想を得つつ、数々の絵画を生み出してきました。幸田の作品の多くは、優しい光や影の表現に満ち、大胆な筆致と繊細な色調の響き合いを通して、そこに暮らす人々の想いや息遣いまで感じさせます。幸田の制作は、アトリエで完結するのではなく、さまざまな土地や人々との出会いによって進化しているのです。今回、東京・府中を拠点に制作するにあたり、府中市の代表的観光スポットである東京競馬場に注目します。空と競馬場を描いた一枚の小さな油彩を起点として、その絵をもとに日々ドローイングを描くことで、最終的にもう一つの大きな空と競馬場の絵を完成させる予定です。身近な景色が画家の眼と手によってどのように作品として生まれ変わるのかをお楽しみください。