小樽には、北海道唯一の能舞台「旧岡崎家能舞台」があり、小樽市指定歴史的建造物に登録されています。江戸幕府が幕末に整えた最上級の格式にのっとっている能舞台として、東北以北で唯一のものとされます。旧岡崎家能舞台は、大正15年、小樽の商人岡崎謙が、入船の自邸の中庭に見所とともに創建しました。没後、岡崎家から舞台部分を切り離して小樽市に譲られ、昭和36年に旧小樽区公会堂とともに小樽公園内に移築されました。その後、能舞台の整備と有効利用を目的に、「能に親しむ会」、続いて「旧岡崎家能舞台を生かす会」が発足。同会は、移築してから演能されずにあった能舞台の復活を願い、三ツ江匡弘会長を中心に、謡や仕舞などの講座や「能楽体験ゼアミナール」など、市民に能の魅力を伝える活動を積み重ねました。このような活動が評価され、平成23年「旧岡崎家能舞台を生かす会」は、北海道地域文化選奨を受賞しています。
一方、能面作家の外沢照章は、能舞台に魅かれて小樽に移住を決め、三ツ江会長と深い交流を育み、演能への作品提供や能舞台に隣接する公会堂を拠点に15年にわたる公開制作や能面展を開催しました。
本展は、北海道に能楽文化を根付かせる原動力となった歴史的能舞台「旧岡崎家能舞台」にちなみ、岡崎家ゆかりの品々、多彩な装束、謡本、扇子類と、能舞台の建築模型・設計図、外沢照章制作の能面の数々を展覧するものです。あわせて、岡崎謙の業績と、その心を受け継いだ三ツ江匡弘の活動を紹介いたします。
*都合により出品作品が変更になる場合があります。