鴨居玲は1928(昭和3)年に石川県金沢市に生まれました。金沢美術工芸専門学校(現、金沢美術工芸大学)で、同じ石川県出身の洋画家宮本三郎(1905-1974)に師事し、在学中の1948(昭和23)年に石川県現代美術展で県知事賞を受賞し、同年、二紀展に初入選して同展に出品を続けます。
1959(昭和34)年には初めてヨーロッパに渡り、その後単身でブラジルやボリビア、ペルーを放浪し、再びヨーロッパに戻るなど、海外を渡り歩きます。1967(昭和42)年、帰国して再び二紀展に出品すると、翌年には会員に推挙され、1969(昭和44)年に昭和会賞と安井賞を受賞して画壇に認められることとなります。1971(昭和46)年から4年程はスペインで制作し、パリの日動画廊やニューヨークなど海外でも個展を開催しました。1977(昭和52)年に帰国し、神戸にアトリエを構えて制作に取り組む一方、安井賞の選考委員や二紀会委員を務めます。しかしながら、1982(昭和57)年に過労のため倒れ、入退院を繰り返すようになり、1985(昭和60)年、突如として自らの人生に幕を下ろすこととなりました。
本展覧会では、代表作《自画像(絶筆)》をはじめとする自画像や、酔っ払い、老婆など、人間の内面に向き合いその苦悶を人物像に投影した油彩画やスケッチなど、日動美術財団が所蔵する鴨居玲の作品と資料、約100点を紹介します。