ヒノギャラリーでは2022年5月9日(月)より「高見澤文雄 新作展」を開催いたします。
高見澤はこれまで、「繰り返し」「重ねる」という行為によって、記憶や時間を示唆する作品を多く生み出してきました。1980年代頃から創作の軸を絵画へと移し、この20年ほどは同じ手法による油絵の制作に取り組んでいます。
水面で生じる光の反射やゆらめきといった自然の移ろいが、それら作品の契機となっているのですが、最終的に私たちが目にするのは、多色の線で埋め尽くされた画面です。何層にも描き足されたその痕跡は、儚い一瞬をとらえた情景の蓄積とも取れ、可視化された時間がその刹那と永遠の両方を観るものに投げかけます。
もはや高見澤にとってライフワークともいえるこの絵画制作は、生きることと直結しているのかもしれません。そもそも「繰り返す」行為は、日常を示すものでもあり、作家にとって制作がその一部だとすれば、生との繋がりは明らかです。同じことを繰り返しているようで、すべては常に変化している。高見澤が長年変わらず描き続けている作品の中にもまた、そうした人間を含む自然のありよう、生々流転を感じとることができるでしょう。
弊廊での個展は2018年以来4年ぶりとなります。世界はコロナという災禍で一変しましたが、高見澤の作品はどう変化しているのか。ご高覧いただけますと幸いです。