公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第276回として、「山本浩之展」を開催いたします。
室内に佇(ただず)む静謐(せいひつ)な人物画を描く日本画家・山本浩之さんは蝶などの虫やものを作ること、絵を描くことが好きなおっとりした子供でした。身の回りのある美しいものをじっと見つめ慈しむ姿勢は、幼い頃から自然と育まれていました。東京藝術大学大学院にて日本画を専攻し、現在は筑波大学で後進の指導にあたりながら院展を中心に作品を発表しています。
山本さんは人物を主要なモチーフとして描き続けてきました。人体の形態は画面構成において大きな骨格を作れる上、心情の投影がしやすいといいます。人物の多くは、表情がはっきりと見えません。山本さんはモデルの個性や絵画の中の物語を描くのではなく、普遍的な人間の姿や心のありよう、絵を描いている自身の好奇心や感情の動きを表現しようとしているのです。
人物の周りには風に揺れるカーテンや鉢植えの植物、雑貨が配置されています。どれも空間の中でひっそりと息づき、愛着と郷愁を感じさせます。淡い色彩で描かれた画中の部屋は、人の心の中のように奥深く、安易に踏み込めないような繊細さとそれでも分け入っていきたい謎めいた魅力にあふれています。
今展では春の院展出品作を中心に優品16点を二期に分けて展示します。