渕田安子は1933年に熊本市で生まれました。20歳で戦後の熊本の美術を牽引していた海老原喜之助の薫陶を受け、色彩、構図、空間への関心が高まると、30歳代から40歳代にかけては二次元と三次元の空間構成を学ぶために金属などを素材とする立体造形にも挑戦しました。その後は、絵画に釘やシャツなど実物を用いる過程を経て、ルネサンスの透視図法を用いた具象とセザンヌ以降の抽象を複合体として同じ画面で共存させる独自の表現を追求してきました。「いずれ自分自身のところに戻るので思いっきり旅をして良い」という意味の海老原の言葉を胸に、「いつか自分にたどり着く」ことを目指して、現在も精力的に制作に臨んでいます。公立美術館における個展としては15年ぶりとなる本展では、寡作な画家としても知られる渕田安子の初期の作品から近年の未発表作品まで16点の絵画を展示します。