公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第281回として、「下妻市ふるさと博物館所蔵 市村緑郎展」を開催いたします。
下妻市出身の彫刻家・市村緑郎(1936~2014)は、高校生の時に出合ったイタリア彫刻の量感豊かな表現に惹かれて東京教育大学(現・筑波大学)で彫刻を専攻しました。在学中より日展等に入選し、卒業後は教員を続けながら日展、日彫展、白日会展を舞台に作品を発表します。1977年には文部省短期在外研究員として渡欧、イタリアを中心にヨーロッパの彫刻と美術教育について研究を深め、帰国後は埼玉大学や熊本県の崇城大学などにて後進を指導しました。
初期の市村は荒々しい粘土の質感を活かした重量感のあるたくましい男性像が主でした。やがて子供や女性像とモチーフの幅を広げ、具象表現だけでなく半具象や抽象的な表現にも取り組み、現代彫刻のコンペティションでも受賞を重ねて高い評価を受けていきます。
制作の基本としていた裸婦像は、見つめる、うつむく、日常の何気ない仕草から想を得て動きを捉え「空」「風」「水」など自然から受ける印象を投影してリアルに表現しました。晩年に向かうにつれ女性像の表面は滑らかに磨かれるようになります。引き締まり張りつめた肢体が内包する溢れんばかりの生命力は、市村の無駄のない確かな造形により生み出されたものです。
2008年に日本藝術院会員となった市村は、常に新たな表現を模索する好奇心を失わず2014年78歳で亡くなるまで精力的に制作に打ち込み続けました。
今展の出品作品は全て下妻市ふるさと博物館所蔵となります。第1会場は抽象作品や小品も含めた21点を2期に分け、第2会場では大作13点を展示いたします。
公益財団法人 常陽藝文センター