ごあいさつ
公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第280回として、「わらぼっちの里 武石絹枝展」を開催いたします。
洋画家・武石絹枝さんは昭和11年ひたちなか市に生まれました。戦時下の子供の頃に描いた体力増強のポスターを先生にほめられたり、中学生の時に県展で大人に交じって入選したりして絵を描くことへの情熱を育み、茨城大学教育学部の美術科に入学しました。
卒業後は美術教師として勤務しながら風景画を描き、昭和41年には瀬戸内海最西部の祝島を描いた作品が日展に初入選、画家として順調なスタートをきりました。しかしその後、仕事に加え育児と夫を含む家族の介護に追われるようになり自身の制作から遠ざかってしまいます。
武石さんが再び本格的に絵筆を握ったのは、教員の退職後のことでした。かつての師である故・西田亨に挨拶にいくと激励され、平成10年に32年ぶり2度目の日展入選を果たします。その際にモチーフに取り上げ今も描き続けているのが、住んでいる大子町のわらぼっちのある風景です。
大子町では刈り取った後に積み上げた稲わらをわらぼっちと呼びます。武石さんはわらぼっちという言葉の愛らしさや、寒さの中で家族のように寄り添って立つ姿に惹かれるといいます。武石さんは年々作る人が減っているわらぼっちの保存運動に奔走しながら、冬の空気の冷たさや懐かしいわらの匂いを感じさせる大子町の光景を描き出しています。
今展では日展初入選作と32年ぶりの入選を果たした作品を含む日展・光風会出品作を中心に優品14点を二期に分けて展示します。
公益財団法人 常陽藝文センター