公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第278回として、「自由から自遊へ 由良りえこ展」を開催いたします。
兵庫県出身の陶芸家・由良りえこさんは、日本画を学んでいた京都市立芸術大学の講座で初めて陶芸に触れました。1990年から茨城県に居住すると、筑波大学に日本画の研究生として在籍しながら公開講座で陶芸の基礎を学び、その後は独学で修得します。由良さんは日本画よりも先入観を持たずに自由な表現ができると感じ、陶芸に専念することにしました。
自然の石や土、古墳の出土品などのざらざらとした質感が好きだという由良さんは、ある時、河原の石を掘り出すと地面にあく穴の連なりにヒントを得て、半球体の窪みを繋げるパターンでオブジェを作り始めました。しかし、球と球を繋ぐ接点が一つのため、球の数を増やしても同じような形状でしか展開していけないことに悩みます。試行錯誤を繰り返していた時、笠間焼の作家達が営むギャラリーから個展の誘いがあり、箱を繋いだ作品を実験的に制作します。箱は面でも点でも繋げるため不規則なリズムで形を変えて展開でき、その一部を切り開くと内包する空間が現われ構造的にも軽やかになりました。引っ掻くように描く草花や、弁柄を基調に調合した赤い上絵具などでランダムに配置する抽象的な文様は、箱の輪郭を曖昧にして形からイメージがはみ出すような効果を生み出しています。
ひとつ作品を完成させると次の課題が見えてきます。由良さんは、まるで謎解きをする子供のような好奇心でその課題を楽しみながら制作し続けてきました。由良さんにとって陶芸はイメージを遊ばせながら自由に表現できるツールなのです。
今展の前期は球を繋いだ作品5点と水面の泡の文様に触発されて制作を始めた「水の化石」シリーズの作品を6点、後期は「水の化石」シリーズ2点と「自遊な箱」シリーズの作品12点を展示いたします。
公益財団法人 常陽藝文センター
箱の組み合わせは面白い。
平面と平面が組み合わさって出来ている箱
箱と箱とを組み合わせるとできる広がりのある空間
箱の面に線を引く 点を描く 草花を描く
イメージが浮遊し後は作品が導いてくれる。
平面的なものと立体的なものを融合した作品
『自遊な箱』が生まれた。
由良 りえこ