宮脇綾子の心温まる世界―――。それは、終生良き妻、賢き母として、慎ましくも心豊かな生涯をおくった女性にして初めて成し得た、類奇な芸術世界です。
多難な青春時代を過ごした宮脇綾子は、昭和2年(1927年)、22歳のときに生涯の伴侶となる画家宮脇晴と結ばれます。そして戦後の厳しい生活環境の中で懸命に家庭を護りながら、40歳にして古い布切れによる美しいアプリケ作品を創りだしました。それは、布切れのもつイメージが主婦ならではの感覚で野菜や魚、草花などに結び付けられ、美的な創造性と心温まる詩情を兼ね備えた、まったく新しい芸術作品です。
本展は、宮脇綾子の生涯100年を記念して開催するもので、初公開作品を含めた初期から晩年に至る代表作品と、本人の人柄が偲ばれる「はりえ日記」などにより、宮脇綾子の全貌に迫ります。