貴金属のGoldは「全(きん・こん・かね)」や「黄金(おうごん・こがね・くがね)」と読み書き、古今東西の人々を惹き付ける魅惑の金属です。その唯一無二の輝きは富や権力の象徴となり、年月を経ても変化しない不変性は、不老不死への憧れとともに神聖視されました。また金属として精製や加工が容易なことから、様々な工芸品へ使用され、その魅力を高めてきました。
「九鬼正宗」の号を持つ国宝の短刀には、桃山時代の有力大名たちに重用された金工師・埋忠寿斎によって作られた金無垢の鎺(はばき)が付属しています。さらに外装の拵には金粉を蒔いた梨子地の鞘に、西条松平家の家紋を金と銀で蒔絵を施し、金無垢の目貫は三匹の獅子が戯れる様子を繊細に容彫(かたぼり)しています。こうした「金」を惜しみなく使用した豪華な御刀は、徳川御三家の紀州家に連なる家格の良さならではの威容を現在に残しています。
また、質実剛健と呼ばれた家風の岡山藩池田家においても、金を紙よりも薄く伸ばして貼り合わせた金箔地に緑が鮮やかな竹林を描いた屏風絵、文殊菩薩が騎乗する獅子を表現した金泥の能面、金糸や金箔が使われた能装束など、華やかな大名文化を見ることができます。
本展では将軍、池田家のお殿様やご婦人たちの書画、能装束や能面、雛道具、寝具など岡山藩主池田家に伝来した文物を中心に、刀装具や甲冑、陶磁器や調度品など日本の風土に花開いた様々な黄金文化をご紹介いたします。
日本に花開いた黄金文化の、褪せることなく煌めく永達の輝きを探しにご来場くださいい。