草野心平の詩集『日本砂漠』の直筆原稿は、心平の生誕百年を迎えた平成15年(2003)、長光太ご遺族より北海道立文学館に収められた資料の中から発見されました。
長光太(本名・末田信夫)は、第二次世界大戦頃から心平と親交があった詩人で、戦後、北海道札幌市で図書編集や映画製作にたずさわり、一時期上京しますが、晩年を帯広市で過ごしました。昭和22年(1947)7月、心平が復刊する「歴程」の同人でもありました。
『日本砂漠』は、「わが抒情詩」「誕生祭」「るるる葬送」「ごびらつふの独白」などを含む詩作品30篇を収めた心平の戦後初の詩集で、昭和23年5月に札幌の青磁社から出版されました。昭和21年3月に中国より帰郷してから、いわき市小川にて、「歴程」復刊に奔走し、生活のために小川郷駅前で貸本屋「天山」を開いていた頃に書いた詩作品をまとめたものです。
本企画展では、初公開の『日本砂漠』の直筆原稿と、心平と長光太、心平と高村光太郎との往復書簡などから、戦後、詩作活動を再開する心平を紹介します。