巷の喧噪を離れて暮らすことは、古くから文化人たちの憧れでした。本展覧会では「隠逸の山水」と題し、静けさに満ちた情景を描き出した日本の作品を中心に展示します。水辺や山中にたたずむ理想の書斎を描いた禅僧たち、力強く整った自然の景観を描き出した狩野派、中国絵画を踏まえつつ己の個性を発揮した文人画家たち、実際に見てきたかのように現実味あふれる山水画を創作した写生画派など、様々な表現で描かれた山水画を見ていきます。山水画はなぜ描かれ、鑑賞されてきたのでしょうか。室町時代から江戸時代まで、幾世紀ものあいだ愛されてきた山水画の意義と魅力を“隠逸”という観点から読み解きます。(担当 仁方越洪輝)