江戸時代の富山には、多くの旅人が訪れました。それらの人々は、公務出張の武士、商用の町人、単身赴任の学者、見聞を広める旅に出た医者、立山参詣の信者、さらには各地を巡り歩く俳諧宗匠や絵師、取材旅行の作家など、旅の目的も身分も様々です。
この富山の地で、訪れた人に強い印象を与えたのが神通川船橋でした。大きく弧を描いたダイナミックな姿は、「日本一の船橋」と評され、様々な名所図会や浮世絵版画に描かれ、その姿は広く流布するようになりました。神通川船橋は、全国に知られた富山名所、霊山立山と並ぶ越中名所となったのです。
また、このような名所だけではなく、富山の人々の暮らしについても、旅行案内記や紀行文、さらには風土や風俗が詠み込まれた詩歌から垣間見ることもできるでしょう。
本展では、神通川船橋と立山という二大名所を軸に、越中を訪れた人が描き、記した画や文を通して、彼らが抱いた越中富山のイメージを紹介します。