脇村禮次郎氏は1904(明治37)年和歌山県西牟婁郡田辺町(現在の和歌山県田辺市)に生まれ、旧制田辺中学、東京商科大学(現在の一橋大学)を経て三菱銀行に入行。その後、1986(昭和61)年に第一線を退くまで実業界の重鎮として多年にわたり活躍していました。美術に関しても、実兄の故脇村義太郎氏と同様に早くから関心を持ち、ニューヨーク勤務の時代には積極的に美術館を巡って展覧会を観覧していました。帰国後は美術作品の収集にも力を入れ、鎌倉市に在住してからは多くの文人や美術学者、画家たちとも交流を深め、自己の美術鑑識の眼を養っていきました。1988(昭和63)年1月、83歳で逝去されましたが、「郷里の田辺市に美術館を」という故人の遺志により、氏が所蔵されていた文人画・日本画のコレクション100余点などを基点として1996(平成8)年当館が開館しました。本展覧会では、当館の開設に大きく寄与され故脇村禮次郎氏の生誕百年を記念して、文人画・抽象画・陶器など、氏が生前収集されていた多岐にわたる美術作品を中心に、卓越した鑑識眼と美術に関する飽くなき探究心を備えていた禮次郎氏の功績を紹介します。