東京藝術大学は、前身である東京美術学校の設立から135年の長きにわたって作品や資料の収集につとめてきました。その内容は古美術から現在の学生制作品まで多岐に及びます。当館では、この多彩なコレクションを広く公開する機会として、毎年藝大コレクション展を開催しています。
2022年の藝コレは、「春の名品探訪」と題して約3万件の所蔵品の中から選りすぐった名品を中心に展示します。さらに今回は、天平の美術に思いを馳せた特集展示も見どころとなっています。
8世紀奈良の天平美術は、国際色豊かな唐の影響を受けつつ鎮護国家思想のもとに花開き、後代にも大きな影響を与えました。著しい損傷を被りながらも威風を伝えている《月光菩薩坐像》は、天平彫刻を代表する仏像のひとつです。また今回の展示では所蔵する乾漆仏像の断片や東大寺法華堂天蓋残欠に新たな光を当てています。最新の研究成果により南都仏師たちの技法が解き明かされます。
そして特集の白眉は、《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》(重要文化財)です。今回の展示では、厨子とその内側四方に描かれた合計7面全て、さらに吉祥天像(模刻)によって立体的な展示を試みます。鎌倉時代に制作されたこの名品にも、天平の面影を見ることができます。