光をどうとらえるか、光の中で対象をどう描き表すかという問題は、洋の東西を問わず画家たちにとって大きなテーマの一つでした。特に印象派の登場以降は、描く対象には固有の色はなく、その色や形は、刻一刻と変わりゆく太陽の光とともにうつろうものであるという認識のもと、画家たちは光を意識しつつ描法や色彩の用い方に工夫を凝らしてきました。また人物画においては、光の反射や陰影によって立体感や量感を表現するのに加え、光と影の対比を用いて人物の内面を如何に表すか、その心理描出の探求もなされています。
本展では、コレクションの中から、「光」の表現に注目し、風景や人物をモチーフに生命のきらめきや美しさを描き出した作品約70点を展覧します。主な出品作品は、岸田劉生の《毛糸肩掛せる麗子肖像》や黒田清輝《木かげ》、青木繁《風景》のほか、2021年度に寄贈された照沼彌彦の写実絵画11点など。画家が見た光を想像しながら、また自らの光の記憶を呼び覚ましつつ、光と影に彩られた作品の数々をご堪能ください。