小樽では、日本美術がアンフォルメルや反芸術の流行から、コンセプチュアルでストイックな表現に移行していった戦後においても、写実な風景画家が多く生まれました。
その背景には、商都としての繁栄や、威厳ある歴史的建造物、海と山がおりなす豊かな自然など「絵になる風景」のモチーフに恵まれていたことはもちろんのこと、それらが時間とともに姿を変化させていく様も芸術家たちの心をつかみ、それを克明に描き残そうと、多くの風景画が生まれました。また、日本を代表する風景画家・中村善策の存在も後進に大きな影響を与えました。
2020年から続く、これまで経験したことのないような感染症の拡大で、多くのイベントが中止になり、全国の美術館も休館を余儀なくされました。遠方への外出が制限されるなか、人気のない地元を歩いていると、さみしさを感じる反面、いつもの景色のよさやおもしろさに改めて気が付いた方も多いのではないでしょうか。
本展ではさまざまな視点から“小樽の風景”が描かれた絵を紹介します。みなさんも一緒に「どこ」を描いた絵なのか、絵の前で考えてみてください。
それは明確な正解があるかもしれないし、あなたの中だけに特別な答えがあるかもしれません。
気軽に外に出られない毎日だからこそ、美術作品から小樽の風景に思いを馳せてみましょう。