収蔵作品展「これまで・これから アートの転換点」では、表現や鑑賞の転換点となる作品を紹介します。
作品表現が、生涯を通して変わらない美術家もいますが、ほとんどは、制作環境や社会状況の変化と共にテーマが変わり、それに伴い制作技法も変化して、あたらしいステージに移っていきます。また、これまでの制作に行き詰って、意識的に新しいテーマや技法に取り組み、表現の転換を模索する場合もあります。
逆に、鑑賞する立場からの、転換点もあります。進学や就職、引っ越しといった生活環境の変化、気候変動や大震災に伴う意識変化、鑑賞体験の蓄積をはじめ様々な要因が鑑賞態度に変化を求めます。東北の大震災の津波の後、海の絵に別の感情を持ち始めた人も多いと思います。
見慣れた当館所蔵品を貸出先のよその美術館で目にしたとき。昨秋開催した「日本美術の源流-雪舟・狩野派から近代美術」展など、他館の所蔵品と並べられた郷土作家の作品を見たとき。見慣れた作品が輝いて見えることに気づいた人も多いと思います。10年前の開館30周年時に実施した感詰プロジェクトに参加された方は、今回の展示と、10年前の展示の感想を比較すると新たな転換点を見つけることができるかもしれません。鑑賞体験そのものの転換点を見つけることもできるのではないでしょうか。
これまで何とも思わなかった作品が、ある日急に気になり始めたり、他の作品との関連から自分の中で再発見されるといったことが起こった時、鑑賞の新たなステージに移行したことを意識してみてください。そして、今回の展示で、それぞれの美術作家の転換点とご自身の鑑賞の転換点を意識し、より深い鑑賞のきっかけとなることを期待します。