「夜―透明な渾沌」、この言葉は岡本の著書、『わが世界美術史 美の呪力』の章タイトルです。「岡本太郎と夜」、この組み合わせは一見意外に思えるかもしれません。《太陽の塔》や、原色を多用した鮮烈な色彩―こうしたイメージからか、ときに「太陽の人」と呼ばれた岡本ですが、岡本と夜の関係は思いのほか、深いものなのです。「太陽の輝くとき、だが絢爛なる陽をあおいで、ふり向くと、広大な夜がひろがる。」と言うように、岡本が太陽を見つめるとき、その眼差しは夜にもまた向けられていたのでした。代表作のひとつでもある《夜》をはじめとし、1948年に結成した芸術団体「夜の会」も、岡本を語るうえで欠かせないでしょう。さらに岡本の描いたさまざまな「夜」を、著作における言葉を引用しながら展示します。本展では、「夜」というキーワードによって岡本作品を読み解くことで、その新たな一面をご紹介します。そして、岡本が「透明な渾沌」と称した夜の世界観を体感していただければ幸いです。