2001年、ワシントンの米国議会図書館で江戸時代後期の測量家、伊能忠敬(いのうただたか、1745~1818)が作成した「大図(だいず)」と呼ばれる日本地図が207枚発見されました。伊能図は中国伝来の暦学から近代天文学・近代測量への転換点にあたり、実測の緻密さにおいて、19世紀初頭の世界水準を示すものです。忠敬が制作した日本地図は、大図214枚(1/36,000)、中図8枚(1/216,000)、小図3枚(1/432,000)からなり、中図と小図は国内に伝存していますが、大図は国内に約60枚が残るのみでした。今回の発見により、伊能図のうち最も精緻な大図の内容をほぼ示すことができるようになりました。
本展では、アメリカから里帰りの大図に加え、フランスで所蔵されている美麗な中図、国内に現存する中図、小図の優品、また測量機器などを展示します。このほか、伊能図が制作される以前の幕府撰日本総図や刊行日本図もあわせて展示し、江戸時代の日本図をふり返ります。