室町時代(1336~1573)の文化は、能や狂言・茶の湯・生け花など、今日も息づく芸能の多くがこの時代に生まれたことからもわかるように、現代日本文化の原点というべきものです。そして、室町文化の中心に位置するのが京都の室町幕府、足利将軍邸です。
将軍邸を構成する建築の中でとくに重要なものが、人々が集まって能・狂言を鑑賞し、連歌会や茶会を催した、会所(かいしょ)と呼ばれる建物です。室町文化の象徴ともいえる会所の襖は、将軍家の御用絵師である周文(しゅうぶん)(生没年不詳)をはじめとする、当代を代表する画家の絵によって飾られました。
残念ながら、これらの襖絵はすべて失われ、現在、目にすることはできません。しかし、残された文献から、会所の襖にどのような画題の絵が描かれていたかを知ることができます。また、襖絵と画面の規模と形式がごく近い屏風絵によって、それを復元的に想像することも可能です。
本展覧会は、足利将軍邸の会所襖絵における典型的な画題を選び、室町後期から江戸時代に制作された屏風絵を集め、一堂に展示することによって、〈将軍家の襖絵〉の世界をよみがえらせるものです。室町絵画の核ともいうべきそれら襖絵が、日本絵画史において果たした役割の大きさについて再考する機会にもなるでしょう。