このたびの展覧会では、木を素材とした現代の彫刻、近現代の版画など木のぬくもりを感じさせる作品を紹介します。徳島県の相生森林美術館の所蔵作品、約50点を展示いたします。
日本の彫刻の代表的な素材として、木をあげることができますが、木は古くから、彫刻はもとより、日本の生活に密着してきました。日本における木の使用比率は、彫刻に限らず建築や身の回りの工芸品や生活用品全般で圧倒的でした。
このたびは、第二次世界大戦後に制作された作品が中心であり、抽象彫刻が主流です。具象から抽象への変化は、彫刻の表現が広がったととらえることが出来ますし、一方では、彫刻概念の変化ともとらえられます。また、このような変化を彫刻という概念のみでとらえるのではなく、木を素材とした新しい立体造形ともとらえられるでしょう。
このたびの展示には、平櫛田中賞受賞作家の作品も含まれますが、平櫛田中賞は、田中が百歳を迎えた時、自らの浄財を寄附して若い彫刻家を育成したいという気持ちから設けた賞です。田中は後輩の育成に熱心で、展覧会に出品された後輩の作品を、援助のため買い上げることもありました。
本展では、木彫に情熱を傾けた田中の意思を受け継いだ彫刻家たちの作品を、ぜひご覧ください。