■日本にとって20世紀は近代化の世紀でした。美術においては、油画の手法や彫刻の概念が導入され、伝統的な書画から絵画が独立しました。博覧会や美術館において作品が鑑賞されるようになり、画壇が組織されます。欧米化の受容が進められる一方、伝統的絵画から模索された「日本画」と「洋画」が並立する状況は、現在も継続しています。第二次世界大戦の敗戦により、明治政府が築いた体制は崩壊しました。敗戦後の日本で、戦前の前衛の模索は、海外の動向をほぼ同時期に受容するようになり新たな展開を迎えます。そして現在、冷戦構造の終局、グローバリゼーションの波により、世界が大きく変動するなかで、日本の社会と経済は大きな見直しを迫られています。
こうした状況下にあって美術に何が可能なのか――近代化の軌跡を見直すことで、その答えに到るヒントを得ることができるのではないでしょうか。このような意図のもと、近代以降の絵画史を再構成することによって、そこに大きな役割を果たした美意識の変遷を浮かび上がらせることをこの展覧会は目指しています。また日本がこのような近代の歴史をたどった理由をその美意識の変遷から見出しうるかもしれません。
■この展覧会は、東京都藝術大学大学美術館、東京都現代美術館、セゾン現代美術館の三つの美術館が共同して企画したものです。三館の誇る明治から戦前・戦後にわたる膨大なコレクションを選りすぐり、日本各地から名品も合わせた600余点を、東京藝術大学大学美術館(第一部)と東京都現代美術館(第二部)の2会場で展覧します。
第一部 (会場:東京藝術大学大学美術館 B2F・3F)
第一章 博覧会美術
第二章 美意識の形成
第三章 風景画
第四章 静物画
第二部 (会場:東京都現代美術館 1F・3F)
第五章 アカデミズムの視覚-画家とモデル
第六章 理想化と大衆性
第七章 日常への眼差し-近代の規範
第八章 〈東洋〉と〈日本〉
第九章 絵画へ-〈インターナショナル〉スタイル
第十章 戦争画
第十一章 〈戦後〉という時代
第十二章 リセット:1950-1960年代
第十三章 ものと観念
第十四章 日本ポップ
第十五章 絵画の世紀