近藤亜樹(1987年生まれ)は2012年に東北芸術工科大学大学院を修了し、現在山形を拠点として活躍するアーティストです。在学時より卓越した才能を評価され、絵画を中心に国内外の展覧会で精力的に発表するほか、建築や音楽とのコラボレーションなど多方面で活動しています。「生きる」ことそのものを絵画に託す近藤の表現に影響を与えたのは、在学時に体験した東日本大震災でした。その経験は14,000カットあまりの油絵によるコマ撮りと実写を組み合わせた初の短編映像作品『HIKARI』(2015年)へと昇華されています。もうひとつ大きな分岐点となっているのが、最愛の夫君を突然亡くすという悲痛な出来事と、その後生まれ故郷の北海道に居を移しての出産と息子との出会いです。現実をまっすぐに受け止めて制作を続ける近藤の作品は、いっそう日常のなかの幸せに正面から取り組んだものへとなっています。
2021年春、近藤は初の作品集の出版と都内4ヶ所での大々的な個展「ここにあるしあわせ」を開催し、大きな反響を呼びました。そして母校のある山形に戻り、家族と暮らしながら新たな制作を行っています。
本展では、展覧会タイトルともなっている幅5メートルを超える《星、光る》(2021年)などの新作を中心に、学生時代の作品、「ここにあるしあわせ」で発表された作品4を紹介します。
「生きている人にもいつか生まれ変わる人の心にも届く、祈り、蘇るような百色の光の展覧会にしたい」と語る近藤亜樹の世界に触れ、それぞれの光を感じてください。