本展は、尼崎市出身の画家・白髪一雄(1924-2008)と関連する画家を取り上げ、尼崎市の白髪一雄コレクションと合わせて紹介する初の試みとして、令和2年に没後30年を迎えて再び注目される須田剋太(1906-1990)を紹介するものです。
須田は埼玉県吹上町(現・鴻巣市)に生まれ、旧制中学を卒業後に浦和市(現・さいたま市)に出て独学で油画を学び、光風会、文展、新文展など戦前から戦後にかけて官展で活躍しました。戦後は関西に移り住み、長谷川三郎との出会いにより力強く、造形性豊かな抽象画を描き、世界の現代美術の動向の中で高い評価を得ました。また、1971年から「街道をゆく」(司馬遼太郎著・朝日新聞出版)シリーズの挿絵を、1990年に亡くなるまで担当するとともに、再び具象画を描きはじめ、書においても独創的な作品を残しました。
白髪は尼崎市に生まれ、京都市立絵画専門学校(現:京都市立芸術大学)に進学して日本画を学びました。卒業後は洋画に転向して風景や人物画を描き始めましたが、天井から吊るしたロープにつかまり、床に広げたキャンバスの上に絵具を置いて縦横無尽に素足で描くフット・ペインティングという独自の描画法による抽象画を生み出し、国際的に高い評価を得ました。また、1960年代後半に仏教に関心を抱きはじめ、比叡山延暦寺で得度し(法名:白髪素道)、1974年に修行を行いました。その頃から密教をテーマとした作品も多数描いています。
須田は国画会、白髪は具体美術協会を拠点としていましたが、1950年代の関西の現代美術界ではゲンビ展などにともに出品し、50~60年代に日本の現代美術が国際的な美術展で紹介される際に、二人は日本を代表する抽象画家として選出され、活躍の場を広げました。
本展では、大阪府20世紀美術コレクションの須田作品と、尼崎市所蔵の白髪作品を中心に、「抽象と具象」「仏教」「書」の3つのテーマを軸に約80点の作品を紹介します。