谷風、小野川、雷電ら名力士が活躍した天明・寛政期(1781~1801)の江戸相撲黄金時代に、勝川春章による力士の特徴を似顔で描き分けた相撲絵がさかんに出版され、相撲絵が浮世絵の一ジャンルとして確立しました。力士の立ち姿に加え、取組や日常の姿など画題が広がり、さらに歌川国貞によって力士を大きく捉えた迫力ある相撲絵へと発展しました。
草相撲が盛んだった房総では、江戸相撲の巡業も度々あり、力自慢の若者たちは角界を目指し、多くの力士が誕生します。なかでも小柳常吉と荒馬吉五郎の対決は、谷風と小野川以来の好取組として観衆を沸かせました。怪童力士・鬼若力之助は8歳にして体重67.5㎏もあり、土俵入りを披露して人気を集めます。明治時代には、境川浪右衛門と小錦八十吉が横綱まで上りつめました。
このたびの展覧会では、江戸から明治までの房総出身の力士たちの勇姿を浮世絵によって偲びます。あわせて、相撲小屋が建つ回向院境内の風景、横綱土俵入り、支度部屋の様子を描いた作品やおもちゃ絵など、さまざまな相撲絵をお楽しみください。