線描は 対象物の姿を捉えてはいるが、
写実的な像の再現ではない。
かと言って、おもしろく、或いはかっこよく
意図的な線を描いているわけでもない。
あくまでもそれは描写である。
対象物を目で追って描いているのか、
脳が記憶した残像を再生しているのか、
手の訓練だけで描いているのか。
短い時間で行われる「線を描く」という
一連の動作について、
本人もよくわかっていないのだが、
簡単な線の中に表れた、表情や動きは、
ともすれば 写実よりも、対象物の姿をよく捉える。
線描を軸にして絵画制作を行なってきた。
色彩や明暗、ディテールといった、線描が語らない要素は、
別の視点で描き入れることで、全体として
一つの絵画の形を作っている。