鈴木康広(1979年浜松市生まれ)は、日常の見慣れた事象に新鮮な切り口を与える作品によって、ものの見方や世界の捉え方を問いかける活動を続けています。《まばたきの葉》《まばたき証明写真》《自然を測るメトロノーム》など、鈴木の代表作が当館のエントランスホールに登場します。なかでも、2010年の静岡市美術館開館時に展示された《まばたきの葉》は、オープンしたばかりの美術館と市民をつなげてくれた、当館にとっても思い出深い作品です。
本企画は、開館10周年にあたる昨年度に開催予定でしたが、折しも新型コロナウイルスの感染拡大により延期となっていました。10年ぶりの《まばたきの葉》の展示により、美術館に集う人それぞれの「10年」や「時間」、「記憶」を考える場となる予定でした。延期となったこの1年+αという時間のなかで、日々の生活だけでなく、美術館をとりまく状況も大きく変わりました。均一に流れていると思われる時間も、捉え方や感じ方はひとりひとりで異なり、そこには多様な視点が存在しています。不確かな時間に身を置く今、鈴木の作品を通して過去/現在/未来の新しい関係性に思いを巡らせる機会となるでしょう。