写真家・大石芳野は約40年にわたり、戦争の犠牲になった人々を取材し、悲惨な傷跡に苦しむ声に向き合い、レンズを向けることで、平和の尊さを問い続け、子どもたちの悲しみやつらさ、悔しい思いを全身で受け止め、その未来をもカメラに収めてきた。本展では、戦禍に苦しむ世界の子どもたち、そして、武蔵野市内をはじめ、少年少女時代に第二次世界大戦の犠牲となり、苦しみを抱えつつも戦後を生き抜いてきた国内の人々の姿を取り上げる。
大石は、被写体の内面を写し出したいときにモノクロームを選択する。枯れ葉剤、不発弾、虐殺、破壊、民族浄化、紛争…。ベトナム、ラオス、カンボジア、アフガニスタン、コソボ、スーダンと、子どもたちの真剣で鋭い瞳がストレートに伝える、「戦争はもう嫌だ」というメッセージが、作品を通して多くの人に届くように。
彼らの少年少女時代に、第二次世界大戦があった。東京、沖縄、広島、長崎…。大石が時間をかけて取材した人々が心身に受けた深い傷は、今もなお癒えることはなく、子どもの頃のまま、その瞳には「戦争をもう繰り返してはならない」という魂の叫びが宿っている。
「みんな昔は子どもだった」と大石はいう。「戦争をくぐり抜けた先達がいたからこそ、あなた達が生まれたと若い世代に感じて欲しい」。本展に際して、大石は子どもの頃に戦争を体験した、武蔵野市内に住む7人を新たに取材。大石のレンズ越しに私たちに届く、7人の先達の瞳から、「平和であることの尊さ」が伝わるようにと切に願う。