大正ロマンを代表する詩人画家・竹久夢二(1884-1934)の日本画や油彩画、挿絵、版画、デザイン、詩文など多彩な作品の中で表現された“色”の魅力は、夢二作品の重要な要素の一つとなっています。ふるさとでのこども時代、自分の眼で見た自然を表現することを覚えた夢二は、自らの審美眼で理想の色を追求し続けました。晩年「自分一生涯に於ける総くくりの女だ」と語った美人画の集大成の作品《立田姫》の印象的な赤の表現に至るまで、夢二の色への感覚はいかに研ぎ澄まされていったのか。夢二の肉筆作品や版画などの繊細な色遣い、書き残した文章や詩などをヒントに夢二の色の魅力と秘密に迫ります。
本展ではモダンな色彩の夢二式浮世絵ともいえる《治兵衛》など夢二が情熱を注いだ版画作品や、墨と胡粉のみで可憐な舞妓を描いた《大徳寺》などの肉筆作品の美麗な表現をご覧いただきます。
また、サンフランシスコの日系人向け邦字新聞「日米」(鶴谷壽氏寄贈)に夢二がスケッチと紀行文を連載した「I Came I Saw」や、外遊先で描き2015年に当館に里帰りした幻の油彩画《西海岸の裸婦》など、晩年の夢二が外遊先でたどりついた新たな表現にも注目します。