美術という枠や社会的評価にとらわれず、様々なジャンルのアーティストによる表現活動に目を向けたシリーズ展「あざみ野コンテンポラリー」。第12回は彫刻家・對木裕里による個展を開催します。
對木は、当たり前とされている景色の成り立ちについて関心を寄せ、人や場所や時代が「もの」にどのような意味付けをしているのかを考察し、意味が転換する瞬間をかたちにした彫刻に取り組んでいます。對木の彫刻は、有機的で不可思議な形状の面白さ、唐突にも感じられる素材の組み合わせ、パステルカラーによる彩色を特徴としています。一見すると粘土を手で造形したままのかたちのようですが、水粘土で原型をつくり石膏で型取りをするという少し手間のかかるプロセスで制作しています。石膏のほか木材や石、ブロンズ、粘土、紙、カラービニール、時にはジャガイモや冬瓜といった野菜など様々な素材を用いて、作家にとってリアリティのある手触りやかたち、量感を求めた実験的な作品を数多く生み出しています。對木は本展の構想にあたり、「人の記憶は身体性によって結ばれ、何かを見て、何かを思い出す。ばらばらなモノは身体によってつながる」といいます。本展では「ばらばらの集合体としてつくられた彫刻」を創作の手がかりとした未発表の新作を中心に、ちょっとナンセンス、かつ不思議なダンスに誘うような展示空間に挑戦します。ぜひ心と身体をやわらかくしてお楽しみください。