タカ・イシイギャラリーは、11月27日(土)から12月25日(土)まで、サイトウマコト 「見えるもの、見えないもの。Face Landscape 2021」展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの初個展となる本展では、ペインティング作品「フェイス・ランドスケープ」シリーズより、新作の大作品(215 x 163 cm)4点と、小作品(70 x 54cm)数点を展示いたします。
ニーチェに「表面ほど深いものはない」という明言がある。表面の下に深層=真相がある、仮面の下に素顔がある、と思いがちだけれど、そんなものはない。あるとしても表面がどこまでも重なっているだけだ、と。その意味で、表面というのは深く恐ろしいものである。ペインティングというのはそういう表面に関わる表現なんだと思います。
浅田彰「特別対談 サイトウマコト x 浅田彰」『サイトウマコト 臨界 -Criticality-』北九州市立美術館 2019年 p. 137
無数のドットを膨大な時間をかけて手作業で描いたサイトウの絵画作品は、圧倒的な視覚体験を我々にもたらします。造形された極小の立体作品のように緻密に塗り重ねられた絵具は、まるで増殖過程にある無数の細胞のようです。
90年代半ばより絵画作品の制作を始めたサイトウは、自身の創作意欲を掻き立てる「顔力」を持つ人物をその主題に選びます。当初はスタンリー・キューブリックなど映画作家や、その作品の1コマに映る人物の全身像イメージを用いましたが、やがて人間の狂気が刻み込まれた顔に焦点を絞ります。ルシアン・フロイドやフランシス・ベーコン、アントナン・アルトーなど、ポートレートイメージを素材としてコンピューター上で解体・再構成した網点状の設計図を作り、このデジタルデータを受肉させるかのようにキャンバス上に絵筆で描くスタイルを確立しました。
さらにサイトウは、デジタル上の解体・再構成のプロセスにおいて拡大したデータの細部に思いもよらない別のイメージを発見します。こうした断片を収集し、新たなキャンバスの上に重層的にコラージュすることで抽象絵画「フェイス・ランドスケープ」シリーズが生まれました。
色彩と絵具のボリュームからなるサイトウ絵画の視覚情報を一目で処理・把握することは困難です。画面は絶えず微動し、鑑賞者は作品との様々な間合いを試しながら、マクロとミクロのあらゆる視点から無限の風景に出会うでしょう。サイトウマコトの唯一無二の絵画世界を是非ご高覧ください。