世界中の芸術家が集った、華やかなりし19世紀末のフランス。その地に降り立った一人の日本人青年がいました。彼の名は黒田清輝。鹿児島に生まれ、法律家を志して欧州に渡った彼は、その地で出会った西洋美術に魅せられ、やがて本格的に洋画家を目指すこととなります。
同じ頃、東京にも絵画修行に励む一人の青年がいました。彼の名は岡田三郎助。佐賀藩士の家に生まれた彼は、同郷の百武兼行の描いた洋画に心打たれ、画家になることを心に決めるのでした。
まるで運命に引き寄せられるかのように、二人は1894(明治27)年に出会います。黒田はフランスから持ち帰った明るく瑞々しい洋画で、国内に衝撃を与えたばかり。その清新な画風に、若き岡田は大きな共感と憧れを抱きます。この出会いを契機として、二人はともに大きく羽ばたき、日本の美術界を牽引することとなる洋画団体「白馬会」の結成へとつながっていくのです。
本展では「日本近代洋画の父」と呼ばれる黒田清輝と、彼と志を一にし、のち洋画界の巨匠として活躍した岡田三郎助という二人の大家の交流の軌跡を、東京国立博物館所蔵の黒田清輝コレクションを中心とした名品の数々から御紹介します。さらに、彼らと親しく交流し、同時代を駆けた洋画家たちの名品もあわせて紹介し、日本近代洋画の輝ける時代を御覧いただきます。
二人が生涯をかけて切り拓いた、それぞれの美の世界をお楽しみください。