「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から40年にわたり開催した「今日の作家展」を継承した展覧会です。同時代の表現を多角的に取り上げ、幅広い世代の作家の作品を通して現代美術を考察しています。本年は「日常の輪郭」を副題に、国内外で活動する2名の作家を紹介します。思いがけない事象の発生や進行によって、身近で当たり前であった日常が、めまぐるしく、あるいはゆるやかに変容することがあります。その過程で私たちは、変化に逡巡したり、順応したりしながら日々を送っていきます。一方で、変わることのない、繰り返される日常を改めて意識することがあります。
田代一倫は、故郷・福岡を含む九州北部や韓国、東日本大震災以降の三陸や福島など各地を訪ね、それぞれの土地と人、地域性との新鮮な出会いから肖像写真を撮影してきました。百瀬文は、人と人とのコミュニケーションの間に生じる欲望や抑圧、身体のあり方を主題に制作を展開しています。本展は、出来事の複層性や自己と他者との関係性のゆらぎをあらわす作品を通じて、なにげなく過ごしていた時間を思い起こしたり、見慣れた環境や物事を再認識したりすることにより、私たちの日常の曖昧な輪郭をとらえながら“今日”に向き合うきっかけをつくります。