楠から様々な動物の肖像彫刻をつくる彫刻家はしもとみお。その彫刻は単なる動物像ではなく、「今生きている」もしくは「生きていた」特定のいきものたちの姿です。
幼い頃から獣医を志していたはしもとですが、阪神淡路大震災で被災し、震災で亡くなった動物たちを目の当たりにしたことで「命とは何か」と考え、「輪郭を保つもの」だと思い至ります。以降、失った命の形や今生きている動物たちの美しい姿をありのままに残すため美術の道へと進み、「動物の命」をテーマに制作を続けています。あるがままの命をそのまま楠から彫り出された彫刻たちは、ただの型取りではなく、温もりと愛らしさ、そして今にも動き出しそうなほどの生命感に溢れています。
本展では、制作のために描かれたスケッチもあわせてご紹介します。はしもとの、命あるものへと注がれたあたたかな眼差しと、「生」と「死」という深遠なテーマに向き合う真摯な思いを感じることできます。動物肖像彫刻を通して、それぞれの命の持つ形の美しさを味わっていただければ幸いです。