呉市出身の日本画家・其阿弥赫土(ごあみかくど・1925-2019)は、生涯にわたり郷土を拠点に活動し、広島の日本画壇を牽引しました。東京美術学校(現・東京藝術大学) 日本画科に学ぶも、卒業を待たず学徒出陣。戦後は帰郷して教職に就く傍ら創作を続けました。1949(昭和24)年に第1回広島県美術展覧会で知事賞を受賞、翌年も連続受賞するなど、画家としての実績を積み、1957(昭和32)年には教職を辞して画業に専念。同年から6年間、京都や奈良に居を移して本格的に日本画の研究に打ち込み、画技を磨きました。また、1950年代から60年代にかけては、主に新制作協会日本画部へ出品を続け、入選、受賞を重ねますが、70年代以降は中央画壇から一線を画し、独自の道を探求しました。やがて、優れた技量とたゆまぬ精進に裏打ちされた精神性の深い絵画世界を創出し、自然が織りなす事象や日本各地の寺社などをテーマに、東洋的な心象が漂う幽玄の世界を視覚化した作風を確立しました。
本展では初期作品をはじめ、画業の転換期に制作された《晩秋の記録》シリーズ、幽玄の世界を極めた寺社シリーズ、海や山岳を壮大なスケールで描いた大作など、代表作を一堂に展示するほか、スケッチや初公開資料もあわせて紹介します。
没後2年となる今秋、広島の地で日本画と真摯に向き合い、芸術に一生を捧げた其阿弥赫土の画業を振ります。