千葉市出身の山本大貴(やまもと・ひろき/1982年生まれ)は、次代の写実絵画を担う画家として、最も注目を集める画家の一人です。
山本は大学で油彩の古典技法を学び、初期から一貫して写実表現を追求しています。映画を撮ることにもなぞらえるように、脚本を構想し、人物のポーズ、衣装、調度品などの小道具、全体の配置、照明等を細部まで計算して演出し、油絵というフィルムで何百年も鑑賞できる作品を制作しているのだ、と山本は言います。写真と見紛うばかりに睫毛(まつげ)の一本一本、指先の動きのひとつひとつまで緻密に描き込んだ作品は、独特な質感を持ちます。
クラシックで優雅なドレスを纏い、重厚な調度の中に身を置く女性。近未来的で精巧なメカニックを装着して、鋭い視線を投げかける女性。山本の描く人物は、どこか近寄りがたい品格を漂わせ、謎めいたストーリーを感じさせます。山本が目指すのは、現代に生きる写実絵画です。アニメーションやゲームなどのポップカルチャーに慣れ親しんだ1980年代生まれならではの感性で、従来の写実絵画の枠組みを拡張しています。
本展では、学生時代の作品から最新作まで、山本の代表作約40点を展示します。これまでの画業を振り返ると共に、今後の展望を見据える展示構成となります。