写真家・思想家・評論家・小説家と多彩な顔を持つ藤原新也は、文章と写真を自在に操り、異なるジャンルを自由に横断しながら幅広い活動を続けている現代の表現者です。卓越したイメージ表現と言葉、そして旅の軌跡そのものによって、生きた文明論と人生観を指し示し、時代を広い視野から見据え人間のありようを凝視しながら発するメッセージは、凄まじいスピードで変化する情報化社会の中で、多くのものを見失いがちな人々の心に強烈なインパクトを与えつづけています。
本展は、氏の放浪の端緒となった1969年のインドから始まる一連のアジアの旅、アイルランドなどを巡り、日本を基軸にしながら展開された門司の旅に至るまでの、間断ない移動の足跡を追っていきます。代表作を中心に写真約200点をたどる旅の行方に聖地を見出すことはできるのか。現代のバイブルともいえる氏の言葉と写真が紡ぐ、藤原新也の全軌跡をご紹介いたします。