公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第275回として、「ぬくもりを描く 三好義章展」を開催いたします。
洋画家・三好義章さんは、茨城大学在学中から地元であるひたちなか市の海が見える風景や静物などを描いて茨城県美術展覧会に出品し、卒業後は教員を続けながら、故・西田享(1920~2015年)に師事して主に光風会で活動してきました。1976年、当時大洗町にあった牧場で描いた仔牛の作品で日展に初入選を果たします。以後、仔牛というモチーフは三好さんの重要なテーマとなりました。
仔牛は約2年かけて成牛になりますが、身体の小さな期間はわずかです。三好さんは仔牛の姿を捉えるため、生まれる時期に合わせて時には遠方の牧場まで出かけていきます。好奇心いっぱいの仔牛は片時もじっとしていてくれません。その愛らしい表情や生き生きとした動きを素早くスケッチします。
また、画面には体躯が倍以上ある大きな親牛を配置して、どっしりとした安心感の中で仔牛がはしゃぐ様子や親牛に甘える様子など、親子のふれあう姿を描き出します。
三好さんは、厚塗りの油彩画独特の掠れたようなタッチや、それにより荒れた画面を鑿(のみ)で削ることで得られる滑らかさを使い分けて用いています。その効果は、風景であれば曇天の重く垂れこめる雲やその場に流れる空気感、牛を描く時には生まれたての仔牛の質感の柔らかさ、ぬくもりの表現に活かされています。
今後の前期は初期から1999年までの作品を、後期は2006年から現在までの作品、合計21点を展示いたします。