ニューオータニ美術館では、江戸時代半ばに京都で活躍した画家で、日本の文人画の大成者として知られる池大雅(1723~1776)の展覧会を開催します。
池大雅は、若い頃から儒学や黄檗宗(禅宗の一派)の僧などと交流して、舶載された文人画の画法書である『芥子園画伝』や『八種画譜』などの版本に接し、最新の中国の文人文化を吸収しながら、文人画の画法を独学しました。また、旅を好んで日本各地を遊歴し、富士山、立山、白山などに登りました。そのような日本の景観の実体験を反映しつつ、習得した画法によって描く、「真景図」と呼ばれる山水画を生み出しました。その一方、実際には見たことがない中国の名勝を描いた作品も数多くあります。池大雅はそれまでに学び得た中国の土地や文化に関する知識をもとに、訪れたことのないあこがれの地、中国を描き出したのです。
当館では、ホテル創業者・大谷米太郎翁が収集した≪洞庭赤壁図巻≫(重文)を公開してまいりました。本図巻は、中国の著名な名勝を描いたものです。その湖面の表現は、何度も琵琶湖に通い、水面の動きを見つめた成果をもとに描いたと言われており、実景の実体験を反映しながら異国の地を描出した晩年の優品として知られています。本展は、池大雅の幅広い作域の中から山水表現に注目して、作品を学習期、日本の景観、中国の名勝の3つに分けて展観し、作画の特徴を見るとともに、同図巻への理解を深めようとするものです。