これまで東京画廊は、現代における書の表現をテーマに、1987年・2000年の比田井南谷展、2009年の中野北溟展、2014年の外林道子展、そして2020年の宇野雪村展を企画・開催して参りました。
上田桑鳩に始まる前衛書運動が数世代を経て受け継がれ、昨今、再び現代の表現として蘇りつつあります。本展に出品する三名はまさにその一翼を担うアーティストたちで「書の表現」に欠かせないいくつかの条件を抽象化することに挑戦しています。
北田朋子は「文字性」を捨て、書の本来の意味である書く動作に焦点を当てています。師である外林道子の「體と臓」展から多くのことを学び、現在の制作に至りました。東京学芸大学芸術課程書道科を卒業しています。
Ayako Someyaは「文字性」を残しながら、墨と紙の性質に焦点を絞った表現です。書家・現代アーティストである山本尚志氏から紹介された「ART SHODO TOKYO 2018」で目にしてから三年の歳月を経て、今回の出品に至りました。聖徳大学人文学部英米文化学科を卒業しています。
坂巻裕一は三人の中で唯一読める文字を使った表現です。しかしながら、展示をインスタレーションとしているため文字の実用価値は消失しています。「ART SHODO FESTA 2020」で私が大賞に選んだアーティストです。多摩美術大学美術学部情報デザイン学科を卒業しています。
アートの表現がグローバル化する中、日本(東アジア)に継承されてきた美の対象となる書の表現もドメスティックからグローバルに昇華されなければなりません。
上田桑鳩や比田井南谷と宇野雪村らの前衛書はその過程の端緒であり、近代の終焉を迎える日本において書は現代アートとして残るのか、その分岐点に三人は立ちました。
東京画廊代表 山本豊津