没後50年を迎えた画家、国吉康雄(1889-1953)。1906年、17歳でひとりアメリカに渡った国吉は、苦労して働きながら、おもにニューヨークで美術を学びました。その後ほとんど日本に帰ることなく活動した彼は、やがて、戦前戦後を通じてアメリカを代表する美術家のひとりに数えられ、高い評価を得るにいたりました。
国吉が生きたのは、日本人移民排斥、大恐慌、第二次世界大戦と、アメリカ社会が激しく揺れ動いた時代です。その中で国吉も、しばしば二つの祖国を持つものの苦しみを味わいました。
しかし、その作品には一貫して、国の違いを超えた、人間のいのちの力に託す希望が読み取れます。
初期の、こどものような眼で世界をとらえる作品。1930年代、40年代の、サーカスや酒場に働くものうげな女性たちを描く作品。そして戦後の、カラフルで不思議な夢を思わせる作品。
これらの作品は、どれも、社会の中心でスポットライトを浴びるものではなく、小さいもの、寄る辺ないもの、弱い立場にあるものを描いています。それは国吉が、これらの中にこそ、国や文化や貧富の差を越えて、すべての人間の中に等しくある、無垢で力強いいのちの姿を見出していたからです。そして、国吉がこのいのちの姿を見据えることができたのは、彼自身もまた、アメリカと日本という二つの国のあいだに立つ、寄る辺のない存在だったからではないでしょうか。
この展覧会は、日本、アメリカより集めた油彩、写真作品あわせて約130点により、国吉の作品をご紹介する、久々の回顧展です。
【講演会】※先着150名様 いずれも聴講無料 申込み不要
■3月27日(土)14:00-15:00 トム・ウルフ(バード・カレッジ教授)※通訳付
■4月10日(土)14:00-15:00 市川政憲(愛知県美術館館長)
■4月24日(土)14:00‐15:00 蔵屋美香(東京国立近代美術館主任研究官)
【巡回予定】
富山県立近代美術館(2004年5月29日~7月19日)
愛知県美術館(2004年8月6日~9月26日)
※本展の詳細は美術館HPをご覧下さい(割引引換券を掲出中)
http://www.momat.go.jp/Honkan/Kuniyoshi/index.html
【同時開催】※国吉展チケ・・・