名品セレクション -異文化に触れて
宮崎県立美術館では「郷土出身作家及び本県にゆかりのある作品」「わが国の美術の流れを展望するにふさわしい作品」「海外のすぐれた作品」という3つの柱にそって作品収集を進め、現在約4,200点の作品を収蔵しています。
ここでは、日本の美術史に大きな足跡を残した国内の作家たちによる作品や、シニャックやピカソなど20世紀の西洋美術を代表する巨匠たちの作品、無意識や夢の世界を描こうとしたシュルレアリスムの作品など、コレクションの中から選りすぐりの名品を、毎回テーマを変えて展示しています。
今回は4つの視点から、海老原喜之助など海外の文化に触れた国内作家たちや、チュニジアを旅行して色彩に目覚めたクレー、神話や民間伝承に現代的解釈を加えたキャリントンなどの作品を紹介しています。訪れた土地の文化や風土に触れ、影響を受けた作家たちの作品をお楽しみください。
宮崎の美術 -屏風の魅力
明治時代、日本の絵画は急激な社会の変化の中で転換期をむかえます。西洋の表現も取り入れられ、新しい「日本画」を求めた模索が始まりました。この時代に活躍した本県出身の日本画家として、伝統的な狩野派の流れを汲む山水画で力を発揮した山内多門がまず挙げられます。また、同時代に秀麗な美人画で認められていたのが益田玉城です。
一方、本県出身の洋画家では、太い輪郭線と鮮やかな色彩で独自の画風を追求した塩月桃甫が、大正5年に文展(文部省美術展覧会)に入選しています。また、力強い筆づかいで生命力あふれる女性像を描いた山田新一などが中央画壇で活躍しました。
今回は、宮崎県を代表するこれらの作家の作品を紹介するとともに、「屏風の魅力」をテーマとしたコーナー展示も行います。本県出身の作家やゆかりの作家による作品の魅力をお楽しみください。
想像を生む姿
ここでは、思いもよらぬ形や素材を組み合わせて制作された作品や、見る方向により新たな発見ができる作品を紹介します。
トルッビアーニの「武器の競技」は、銀色に鈍く輝く鋼鉄を素材に、複数の道具を融合させたような工作機械を思わせる形をしています。重厚で無機質な形は、生命を脅かす危機感や不穏な気配を感じさせます。チェローリは、梱包材の薄い板をつなげたり重ねたりして作品を制作しました。彫刻でありながら、シルエットをかたどるという平面的な表現により、見る方向によって新たな姿を発見することができます。保田井智之の「cascade」は、複数の木材を組み合わせた後に形を彫り、各所にブロンズをはめ込んで制作されています。異なる素材の組み合わせによる意外性や、造形の面白さが感じられます。
見る者の想像をかき立てる作品をご堪能ください。
版画家瑛九の仕事
瑛九は、友人の名方和郎(なかたかずお)、伊藤登(いとうのぼる)と結成したグループである創作蔵書票会「抒情社(じょじょうしゃ)」から、1930年に版画集「EX-LIBRIS」を発行しており、名方の木版画を収録しています。その中で瑛九は、版画についての論説を掲載していますが、版画の制作をすることはありませんでした。
その後、1950年代に入ると油彩やフォト・デッサンなどに取り組むと同時に、銅版画を本格的に制作するようになります。銅版画集を発行したり、個展や頒布(はんぷ)会を開催したりしながら、宮崎県や福井県などで講習会を行い、版画の普及にも努めました。1956~57年にはリトグラフにも集中して取り組み、150点以上の作品を制作しました。
ここでは、日本の現代版画が前進することを願って制作や普及に取り組んだ、「版画家」としての瑛九の作品を、瑛九自身の言葉や資料とともに紹介します。