棟方志功は、日本の風土が生んだ不世出の版画家です。明治36(1903)年に青森の鍛冶職の家に生まれた志功は、幼い頃から絵を描くのが好きで、ゴッホのような画家になることを目指して大正13(1924)年に上京。独学で油絵を学び、画の道を歩みはじめます。その後、昭和3(1928)年頃から版画を志し、自ら「板画(はんが)」と命名した木版による独自の表現を創り上げました。独特のエネルギーに満ちあふれた作品は、戦前から高い評価を受けていましたが、戦後にはルガノ国際版画展やサンパウロ・ビエンナーレなどの海外展においても受賞を重ねることになります。そして、昭和31(1956)年の第28回ヴェネツィア・ビエンナーレにおいて版画部門大賞を獲得し、“世界のムナカタ”と呼ばれる国際的な評価を確立します。
昭和50(1975)年に72歳で亡くなるまで旺盛な創作活動を繰り広げ、板画を中心に、「倭絵(やまとえ)」と呼んだ肉筆画、油彩画、書など数多くの作品を遺しました。そのダイナミックな造形性と深い精神性が表出し、生きる喜びに満ちあふれた作品群は、今なお、多くの人々を魅了し続けています。
この展覧会は、初期から晩年までの板画の代表作、および倭絵、油彩画、書、陶芸作品、初公開の《釈迦十大弟子》の板木や、最近存在が明らかになった画稿等の資料を含め、20世紀の日本を代表する芸術家棟方志功の魅力的な「芸業(げいごう)」の全貌を紹介するものです。